ゆゆめも

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【読書】できれば一生踏み入れたくない!漂流めしの世界『漂流者は何を食べていたか』

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『漂流者は何を食べていたか』椎名 誠 著/新潮社/2021.7

 自らを漂流記フリークと語り、実際にその足跡を辿る旅までしてしまう著者による、他に類を見ない、漂流グルメの紹介本。取り上げられている本は、過酷な環境を奇跡的に生き延びた人々の体験記だけに、どれも食べることは生きること、を体現した、エネルギッシュで創意工夫に満ちたものばかりだ。

 漂流者たちは生きるためにペンギンやシロクマの肉を生食し、ウミガメの血で喉を潤し、海水から塩を得る方法を考える。どこを漂流するか、季節はいつなのかなどによって、食料も異なってくるのが面白い。

 特に印象的だったのは、本書の序盤で取り上げられている『奇跡の生還<119日間の漂流>』(ジョン・グレニー、ジェーン・フェアー著)。船が転覆して絶体絶命の中、4名の船員のひとり、ジムが作る料理(魚のマリネや揚げパン、グレービーソースも作ってしまう!)のおかげで、無事に陸地にたどり着けるかもわからない先の見えない状況すら忘れてしまうほどだ。

 残念ながら紹介された漂流記の多くは絶版になっているということだが、これまで漂流記というものを読んだことがないので、もし自分が漂流したときのバイブルとして(そんなことは一生ないと願いたいが)、読んでおくのもいいかもしれないと思う。