ゆゆめも

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【読書】生きものたちの知られざる攻防を垣間見る『ダーウィンの覗き穴』

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ダーウィンの覗き穴』メノ・スヒルトハウゼン 著/早川書房/2016.1

 セックスとは何かー。映画などのフィクションの中で、ふたりの愛を確認しあうロマンティックな行為として描かれていてもそんなに疑問には感じないけれど、どうやら生殖器学者たちの見解ではそんなに穏やかなものではないらしい。

 本書では、雌の皮膚にペニスを突き刺し精子を直に注入するシラミや90センチものペニスを樹上から垂らして絡ませ合い精子を交換するナメクジなど、信じられないほどに奇妙でバラエティ豊かな生きものたちのセックスが取り上げられている。

 筆者によると、より優位な遺伝子を取り込みたい雌と、より多く自分の遺伝子を残したい雄との間で繰り広げられる終わりなき『闘いと舞踏』が、生殖器の進化の恐るべきスピードと多様性を生きものにもたらす、ということらしい。

 あまりオープンに語ることは憚られるばかりか、世間からタブー視される研究も、家畜の人工授精などに役立てられると聞くと、研究者以外の人間にとってももっと身近に感じられても良い学問だということは賛成だ。

 まえがきに「フォアプレイ」(前戯)、あとがきに「アフタープレイ」(後戯)とルビが振られていることからもわかる通り、筆者の遊び心とユーモアにあふれた一冊。添えられたイラストは簡潔なので、スマホの検索履歴はおおよそ人には見せられないものにはなるけれど。